2021年の調剤薬局の倒産件数は過去最多。
どうすればいい?薬局経営

2022/04/08

最近、調剤薬局オーナーの方々とお話していますと薬局の倒産件数が話題に上ります。これは2021年1月〜11月の倒産件数が26件と過去最多となっているという東京商工リサーチのニュースリリースが報道されたため。これはいったいなにが原因なのでしょうか?

原因その1:新型コロナの影響による受診抑制の影響

2020年以降、新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響が外食はもとより、観光、宿泊、イベント業など多くの産業に対し深刻な打撃を与えていることが連日の報道などにより広く知られています。 コロナ

医療分野についてはコロナ診療の対応で大変だと認識されていますが、外出時や訪問した病院でのコロナ感染を警戒した既往症患者の受診控えが病院や薬局の経営に大きな影を落としている現状はあまり報道されていません。
薬が必要な既往症であれば「コロナを怖がりつつも医療機関を受診」「電話やオンライン診療」などにより、どうにかして処方してもらうので、そこまで調剤収入が落ち込まないのでは?と考えてしまいますが、別の理由で処方箋数が落ち込み調剤医療費も下がっていきます。
患者は感染予防の観点から受診を抑制したがり、医療機関はその要望に応えるために次回の受診までの期間を長くするような対応を取ります。(患者が多いと院内感染リスクも高まるので病院側にも抑制したい理由となりえます。)このような流れになっても、患者あたりの処方する薬の量は変わらないため薬局の売り上げに影響がなさそうに感じますが、実態は全く違います(薬局経営に関わる人には言わずもがなですが…)。例えば1ヶ月に一度の定期受診を2ヶ月に一度にされた場合、処方箋の枚数は半減します。単純計算はできませんが、調剤薬局の収入は処方箋の枚数が大きな目安となり、影響は多大です。
グラフ 実際、厚生労働省が定期的に発表する医療費の動向によると2021年4~7月の調剤医療費(薬局の収入)は前年同期比で3.8%減少しています。
2022年になってもオミクロン型のコロナウィルスが広まり、新たな種類のコロナウィルスが発見されるなど、予断を許さない状況にあるため、調剤薬局経営にも地域や医療機関を注視した対応が求められます。

原因その2:将来の不透明さに対する経営の難しさ

ビジネスマン向けの記事では「コンビニより数が多い」という枕詞は店舗や事業所が過剰にある状況についてよく使われます。医療関連では歯科クリニックについてよく例示されますが、薬局も全国に約5万9000店あり、コンビニの5万5600店を上回って過剰と思われてもおかしくありません。
しかも、調剤薬局は小規模経営が多く、業界最大手と言われるアインファーマシーズでも3%程度のシェアとなっています。
この状況に対し大手薬局チェーンや調剤併設型ドラッグストアが規模拡大や営業地域の広域化を相次いで模索しており、各地域で競合相手が多くなっています。
また、先に紹介した新型コロナの影響で経営が苦戦しているだけでなく、2022年度は薬価引き下げの可能性が出ているのも不安材料となって難しい経営を強いられるのは必至です。
経営不振であれば、事業の選択と集中を行う必要性が出てくるため、事業譲渡などにより規模を縮小して経営していくような調剤薬局が増えると考えられます。
M&A 今後、M&Aや事業譲渡の動きが出てくるでしょう。

M&Aコンサルタント渋民 卓馬

調剤機器メーカーで調剤薬局の新規立ち上げや調剤機器の営業、エリアマネージャーとして調剤薬局10店舗の店舗管理の経験があります。調剤薬局に20年関わってきた経験を元に、経営者の方に寄り添いながら全身全霊でお手伝いをさせていただきます。