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  • 調剤薬局業界に大きく関係してくる話題でもある「調剤委託」

「調剤委託」の示す国・経済界が
進めたい方向と薬局の役割

2022/03/03

今後、調剤薬局業界に大きく関係してくる話題でもある「調剤委託」に関して、今回お話をさせていただきます。
2022年1月に関連するニュースが複数報道され「調剤委託」がにわかに話題となっています。1月14日に経団連(日本経済団体連合会)が規制改革相に提言「Society 5.0時代のヘルスケアIII - オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を提出しました。この提言にオンライン服薬指導と併せて調剤委託が記載されており、1月19日に開催された規制改革会議・介護・感染症対策ワーキング・グループで経団連が要望する形で議題となり、有識者や日本薬剤師会、日本保険薬局協会(NPhA)などが見解を示しました。

そもそも「調剤委託」
とは何か?

「調剤委託」とは、薬局の調剤業務を他の薬局に委託することであり「調剤の外部委託」などとも表現されます。現行の薬機法では、施行規則第11条の10に「薬局の開設者は、調剤の求めがあった場合には、その薬局で調剤に従事する薬剤師にその薬局で調剤させなければならない」とあり、調剤業務の委託はできないこととなっています。
そもそも薬剤師の主な業務は「調剤」なので、調剤業務を他に任せるということは想定されていません。しかし、調剤薬局内でも、実際に薬を選んだり、取り分けて包装する「対物業務」と服薬指導や飲み合わせ等の処方内容チェックなどの「対人業務」があり、大きなくくりではこの全てが調剤業務と言えるのですが、主に「対物業務」について委託を可能にすることで設備投資や人員の効率化を促進できるのではないかとの思惑で経済界からアプローチされている状況にあります。

経団連の提言案を見てみよう

経団連が提言した「Society 5.0時代のヘルスケアIII - オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」について「調剤・服薬指導」部分に絞ってよく見ていきましょう。

《今後目指す薬局の姿》

薬局は店舗ごとの特徴を活かした機能分化や連携を強化し対物業務の効率化を図り、今よりも更に対人業務に集中し、患者に寄り添った付加価値の高い服薬指導を実施する。

では患者様の目線から見てどういったメリットがあり、薬局や薬剤師にとってどういったメリットがあるのでしょう。

  • オンライン服薬指導の活用によって、患者様は手持ちのスマートフォン等から都合の良い時間、場所で薬剤師の服薬指導が受ける事が可能。
  • 医師の診察→服薬指導→薬の受け取りまで自宅で行う事が可能。
  • 診察が対面であった場合もオンライン服薬指導と自宅への薬の配送を利用することにより薬局に立ち寄る手間を省くことが可能。
  • 服薬による体調変化や症状改善無し等の場合は必要な時に気軽にオンラインで薬剤師と相談ができる。
  • 薬局は店舗毎の特徴を活かし機能分化や連携を強化し、一包化などの対物業務については、機械化が進んだ薬局に外部委託するなどして効率化を図る。
  • 薬剤師は、飲み合わせ等の処方内容チェック、医師への処方内容照会、より丁寧な服薬指導、在宅訪問での薬学管理、効果や副作用あるいは服薬状況の有無に関するフィードバック、処方提案や残薬の解消等、専門性を活かした対人業務に集中し、患者に寄り添った付加価値の高い服薬指導を実施することが可能。
  • 薬剤師も自宅から服薬指導が可能に?

なかなか刺激的な内容です。 概ね「薬局は今後一層【対物業務】から【対人業務】へ移行しましょう。」といいたい感じになっています。

【対物業務】の効率化とは【調剤】の効率化であって、一包化、計量混合、液剤調剤などは機械化が進んでいる薬局へ調剤委託し、薬剤師は【対人業務】=【服薬指導】の、より丁寧でかつ患者様に寄り添った指導ができるようになる。という良い面が強調されていますが、問題はないのでしょうか?

ズバリ問題はあります。調剤薬局の経営についての視点が欠けているのです。

M&Aコンサルタント中島 幸平

新店舗立ち上げを含めた調剤薬局勤務12年の経験と、その後の事業継承コンサルティングとしてのキャリアから薬局業界を知り尽くしています。
現場と経営のすべての関係者に喜ばれるコンサルティングを致します。