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注文したらすぐに薬が手元に届く宅配サービスとは!

コンビニのOTC医薬品デリバリー
から考える
医薬品宅配の今後

2021/10/12

2021年2月からコンビニ大手「ローソン」が市販医薬品(OTC医薬品)の宅配サービスを開始しており、同9月時点で北海道、関東、関西、中国、四国、九州とサービス提供店舗を拡大しています。フードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を利用した新たな試みで、これまでの医薬品通販とは一線画すサービスについて解説します。

フードデリバリーサービスとは

都市部で街を歩いていると当たり前に目に入るようになった黒や赤の大きな正方形のリュックを背負って自転車やバイクに乗っている人達。彼らはフードデリバリーサービスの配達員なのだ。「フードデリバリー」つまり調理品の宅配は、そば屋の出前から仕出し弁当、宅配ピザなど元々よくあるサービスであったが、2016年に「Uber Eats」が日本に上陸したあたりからフードデリバリー外注サービスを始める企業が増え始めました。自身で配達要員を用意できない飲食店に対し配達サービスを1件あたり数百円で提供するもので、配達員はギグワーカーと呼ばれるスキマ時間を使ったバイト感覚の労働者とされている(配達員を社員としている企業もあれば、フードデリバリー専業としてフルタイム以上に働いている人もいるため、その限りではない)。フードデリバリーサービスは2020年にはコロナ禍での外出自粛の影響で爆発的に普及した業態です。
コンビニ大手のローソンはUber Eatsを利用した配送サービスを2019年より行っています。フードデリバリーだけでなくトイレットペーパーなどの日用品を含めた宅配で2021年8月時点で2000店補で展開しているが、この中の43店舗でOTC医薬品の宅配も始めています。

OTC医薬品の宅配サービス自体は
2014年に始まってる

2010年代前半に話題に上った医薬品ネット通販の是非については覚えている方々も多いでしょう。OTC医薬品の宅配は2014年に改正された「医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法、旧薬事法)により認められ、すでに行われています。
ただし、通販専業の医薬品販売はできないことになっています。しっかりと登録販売者(薬剤師)が勤務している実店舗があり、その存在をホームページ等で周知し、通販商品と同じものを店舗に陳列していなくてはなりません。また、メールや電話での相談窓口の設置も必要です。そして、一般医薬品の分類によってはネット販売できなかったり、販売のハードルが高いケースがあります。医療用医薬品から一般用にスイッチして間もない薬である「要指導医薬品」は取り扱いできません。また、第1類医薬品も販売前に薬剤師による医薬品使用者の状態確認や情報提供などの双方向による細かいやり取りが必要なため、手軽なネット通販とはほど遠いものとなります。

OTC医薬品をフードデリバリーで
宅配するメリットは?

これまでの医薬品ネット通販は常備薬や定期服用する医薬品のストック買いが主な利用と見られます。地方に対しては「近所に薬局がない。」「欲しい薬がない。」などの要望に応えることになりますが、売上の見込める人口密集地では実店舗との価格競争になるのは言うまでもありません。
これに比べてローソンとUber Eatsによる医薬品デリバリーは全く違うサービスと考えられます。風邪や頭痛、虫刺され、打ち身などの軽い不調は、それなりの頻度であり、そのような状況に即対応できる「かゆいところに手が届く」というより「痛い部分に即対応できる」かなり将来性の高いサービスと言えます。
この取り組みにはコンビニと薬局の協業によってもたらされたノウハウも活かされています。取扱品数は52品の第2類医薬品・第3類医薬品とかなり絞り込まれたラインナップとなっていますが、これはコンビニの棚に置かれた商品自体がかなり絞り込んであることに起因しています。コンビニの商品群には電池や筆記用具などスーパーや100円ショップであれば安く買えることがわかっている商品あります。これらは何故コンビニに置いてあるのでしょう。自分で買ったことがある人ならわかると思いますが「定価でもすぐに必要」な需要があるからなのです。薬局併設コンビニも同じように「定価でもすぐに必要」な医薬品のラインナップになっており、これは30分程度で届けてほしい医薬品とほぼ同義です。また、ラインナップが少なく利用者の選択幅を狭めているように見えますが、狭い方が選ぶ時間を少なくして「すぐ必要」の要望に応えているといえます。

医療用医薬品・処方薬の
宅配サービスへの広がりは?

ローソンとUber Eatsによる医薬品デリバリーでは通常のフードデリバリー利用の流れと違い「注意事項の説明」「質問事項への回答」などがあります。このこともあり、他の薬局がフードデリバリーサービスを使って待ち時間の短い医薬品デリバリーを行うことは難しいといえます。しかし、宅配サービスを使った医薬品デリバリーというくくりでは他の方法が考えられます。

オンライン服薬指導を含めた
医薬品デリバリー

コロナ禍の影響により2020年4月からオンライン診療を初診から行うことが認められました。これに対応する形で9月に予定されていたオンラインでの服薬指導も前倒しで始まっています。すでに医療用医薬品(処方薬)のオンライン服薬指導と宅配は始まっているのです。厚生労働省のまとめによると、2020年5・6月のオンライン服薬指導件数は6万8849件で処方箋枚数1325万5298枚からすると0.51%程度ですが、決して少なくない数です。

オンライン服薬指導から医薬品デリバリーの流れを簡単に表すと下記のようになります。

  • (医師が患者を診療し、処方箋を作成する)
  • 医師が患者の希望する薬局に処方箋を送信する
  • 薬局がネット通話サービスや電話を用いて患者に服薬指導を行う
  • (指導に問題なければ、)調剤した医薬品を宅配する

これまで実際にやっていたことをオンラインにするだけですので、薬局での待ち時間や来店の手間などが減り患者側にはメリットの多く、普及していく可能性が高いと考えられます。 上記のスキームをアプリで提供しているサービスなども存在しますが、以前のコラムに書いたLINEにはビデオ通話機能などもあるので、自身のスキームに合わせた方法も検討できるかもしれません。

M&Aコンサルタント渋民 卓馬

調剤機器メーカーで調剤薬局の新規立ち上げや調剤機器の営業、エリアマネージャーとして調剤薬局10店舗の店舗管理の経験があります。調剤薬局に20年関わってきた経験を元に、経営者の方に寄り添いながら全身全霊でお手伝いをさせていただきます。