アピールポイントがない!?なければ作ればいいじゃない!

調剤薬局を高く売る価値向上ポイント

2021/09/07

ご自身の薬局を売却したいとお考えの方はコラム「薬局売却のファーストステップ。事業の利点・欠点をまとめる。」をご覧いただいているでしょうか?
買い手が「欲しい!」と思うアピールポイントを見つけることが重要と書きましたが「自分の薬局には魅力的な部分がない。」「記事を参考に考えてみたが、ウィークポイント(欠点・弱点)の方が多くなってしまう。」と否定的な気持ちになってしまった方もいるかもしれません。しかし、アピールポイントはこれから作ることが可能です。
また、それなりにアピールポイントはあるが、もっと価値を高めて、薬局を高く売れるようにしたいという方にも、この記事を読んでいただければと思います。

1.売上の向上、
黒字経営の継続

薬局に限らず、ある事業の『価値が高い』状態を考えてみてください。「赤字の月がない。」「コンスタントに売上が上がって利益率が高い」などが考えられると思います。調剤薬局についても当然「売上が高く、黒字経営を続けられている」ことが価値が高い状態と言えます。
調剤薬局の主な収入である「調剤報酬」は2年に1度見直されており、何年も同じような経営を続けられる事業ではなくなってきています。それに加えて薬剤師不足などの影響もあり、経営状態が危うい薬局も多く見受けられます。このような売上があまり良くなく赤字が続くような薬局では興味を持つ買い手は見つかりにくいと考えて良いでしょう。
これに対し、かかりつけ薬局への転換や在庫管理の厳密化などによって、売上アップと黒字経営の継続を目指し『価値が高い』状態を作り出すことが大事になります。

2.調剤報酬・処方箋の
単価を上げる

売上を上げるための最もわかりやすい方策は、商品単価を上げることでしょう。知識のない人が薬局の商品単価と聞けば「薬の値段」と思うでしょうが、薬価は国により厳密に管理され変更することはできませんので、これは間違っています。調剤薬局の主な商品は「調剤報酬」であり、処方された薬の調剤や服薬指導などが商品となります。この「調剤報酬」の単価を上げることで売上向上を見込めるようになります。
具体的には下記のような観点で考えるのが良いでしょう。
調剤基本料は薬局の立地や規模によるので変更は難しいですが、体制整備などにより地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算を目指すのが現実的です。
調剤料についても一包化加算や自家製剤加算などで単価を上げることが可能です。
他にも薬剤師の専門性により患者や地域に対する有用な行動が加点となる要素があります。お薬手帳等を用いて服用履歴を管理する薬剤服用歴管理指導料、内服薬処方が多い場合に減薬に繋がる調整を提案する服用薬剤調整支援料、患者や患者家族、医療機関に対して効果的な処方の参考となるように情報提供を行う服薬情報等提供料などです。

3.不必要な経費を抑える

経費を抑えることで同じ売上でも利益率が高まり黒字化に近づきます。薬局の経費の多くは在庫として抱える医薬品と薬剤師などの人件費です。この二つの経費を抑える方法を考えてみましょう。
調剤を生業とする薬局では医薬品の在庫を持たないことには商売ができませんが、この在庫が過剰になることが支出を高める原因となります。使用期限を過ぎて廃棄となれば当然無駄ですが、そこまででなくとも貯蔵スペースの圧迫などの管理コストの増大、薬価改定での卸値変更などのリスクもあります。過剰な在庫への対策としては在庫管理システムの導入を検討してみるのも良いでしょう。医薬品の適切な在庫管理により経費の削減が見込めます。

人件費は薬剤師の雇用がその大部分を占めると思います。薬剤師には専門性に沿った業務を中心に行ってもらい、効率的に運営できるような人員配置や業務内容の見直しなどが考えられます。棚卸しなどの専門性とあまり関連のない業務を減らすために在庫管理システムの導入も効果的かもしれません。常勤を減らしパート職員を雇うなどの対応でも人件費抑制に効果が見込めます。

また、売却間近の時期に気をつけなければならない点として「後発医薬品への切り替え」があります。後発医薬品調剤体制加算などがあり中長期的には経営にプラスになるでしょうが、医薬品販売自体の利益率の低さは帳簿上ではマイナスと見られる原因となります。

4.近隣の病院などとの
良好な関係

病院やクリニックなどの医療施設と良好な関係を持っていることは大きなアピールポイントとなります。近隣の医療施設からの処方内容に対応するためには、どのような処方が行われるかをわかっていなければ医薬品を確保しておけません。対応できない事態が多く発生するようであれば患者が離れてしまうことが確実ですので良い関係性を持っておくことをオススメします。
病院やクリニックと良い関係を持つのに具体的にどうすればよいかというと、定期的に情報交換が必要でしょう。
話し合う場を設け、問題への対処・処方した経緯・ほかの薬への切り替えなどを実施すれば、医療施設などとの関係をよい状態で維持できます。

5.需要(タイミング)を
見極めた売却

アピールポイントとは毛色が変わりますが、需要のあるタイミングでの売却は価値を最大化できます。 需要のあるタイミングの具体的な例としては

  • 近隣に新しいクリニック・病院ができた
  • 近隣クリニックが世代交代した
  • 処方箋の応需枚数が増加傾向にある

など、今後の処方数が増える、または経営の安定性が増すと見込まれる要素があればベストです。
逆に

  • 近場での同業者の開業
  • 近隣クリニックの廃業や移転
  • 調剤報酬の改定の直前

などの不透明感、先行き不安感のある要素がある場合は、売却を考え直すべきでしょう。 掲示した要素を気づけるように、近隣の状況などに気を配っておくことが大切です。

以上、五つのポイントで調剤薬局の価値向上についてまとめました。自身の状況で手をつけやすい部分から検討してみてください。

M&Aコンサルタント渋民 卓馬

調剤機器メーカーで調剤薬局の新規立ち上げや調剤機器の営業、エリアマネージャーとして調剤薬局10店舗の店舗管理の経験があります。調剤薬局に20年関わってきた経験を元に、経営者の方に寄り添いながら全身全霊でお手伝いをさせていただきます。